ニュースの概要
2026年、和菓子店の倒産件数が過去最多のペースで推移していると報じられた。背景にあるのは、小豆・砂糖・米粉といった原材料の値上がりである。包装資材、人件費、光熱費も上がり、複数のコストが同時にのしかかっている。とくに日常的に買われる手ごろな商品を主力にする店ほど、値上げしにくく、収益が削られやすい。老舗や地域密着の店では、価格を上げれば客足が遠のき、据え置けば利益が残らないという板挟みが深刻だという。後継者不足や販売先の縮小も重なり、経営の選択肢は狭まっている。
引用元: 和菓子店の倒産が過去最多ペース、原材料高が経営を圧迫(MANTANWEB)
分析・見解
値上げできない店ほど、コストの波をまともに受ける
和菓子の原価は、小豆と砂糖が大きな割合を占める。あんを炊くとき、豆の重さに近い量の砂糖を使う。どちらかが上がれば、原価に直接響く。そこへ包装資材、人件費、光熱費が重なった。あんを炊く釜も蒸し器も、毎日火を使う。ガスと電気の値上がりは、製造業でもある和菓子店を直撃する。原価の中で動かせないのは材料の質だ。安い小豆に替えれば、味で見抜かれる。しかも洋菓子と違い、和菓子には「一個150円前後」という暗黙の相場感がある。団子や大福は、客が値段をよく覚えている商品だ。十円の値上げでも、客は敏感に気づく。
老舗ほど「いつもの価格」が足かせになる
老舗や地域密着の店は、長年の常連に支えられてきた。その強みが、価格では逆に重い鎖になる。祖父の代から同じ値段で売ってきた饅頭を、急に二割上げるのは心理的にも難しい。しかも常連は高齢の方が多く、年金暮らしの客層に負担を強いることにもなる。客に悪気はなく、ただ「いつもの値段」を信じているだけだ。結果として、店主は自分の給料を削って耐える。帳簿上は黒字に見えても、店主の取り分が十分に入っていない店は少なくない。この「見えない赤字」が限界を迎えたとき、倒産や廃業が一気に表面化する。倒産件数の増加は、長く積み上がった無理の表れとも読める。
後継者不足と販売先の縮小が出口を狭める
原材料高だけなら、値上げと工夫で乗り切れる店もある。厳しいのは、そこに担い手の問題が重なる点だ。職人の技術は、数年では身につかない。上生菓子の細工や、あんの炊き加減は、師匠の横で十年かけて覚える世界である。跡継ぎがいなければ、設備に投資して値上げ後の需要に賭ける動機も弱くなる。百貨店の催事、駅ナカ、法事や贈答といった販売先も縮んでいる。贈答の簡素化や法要の小規模化が、まとまった注文を減らしてきた。大口の注文が消えると、固定費を薄める手段がなくなる。
同じ値上がりでも、倒れる店と残る店の差は何か
他業種の例が参考になる。豆腐店は大豆高と油の高騰で閉店が相次いだが、生き残った店は単価の高い商品を作り、通販や給食向けなど販路を分けた。パン店も小麦高の中で、総菜パンや焼き菓子の比率を上げた店が持ちこたえた。共通するのは、主力商品を一つに絞らず、利益率の違う商品を組み合わせた点だ。和菓子でも、日常品は客を呼ぶ入り口と割り切り、季節菓子や贈答品、法人向けの注文で利益を確保する発想が要る。値上げは一律ではなく、商品ごとに上げ幅を変えるのが現実的である。
ビジネスへの影響
商品ごとに役割を決め、値上げ幅を変える
まず取り組みたいのは、商品別の原価の洗い出しである。看板商品が本当に利益を出しているのかを、材料費、包装費、手間の時間まで含めて計算する。売れているのに儲かっていない商品は、内容量を少し変えるか、包装を簡素にするか、数十円単位で上げるかを選ぶ。一方で、季節の上生菓子や贈答用の詰め合わせは、価格より価値で選ばれやすい。ここで利益を確保し、日常品の値上げ幅を抑える。値上げの際は、店頭に理由を短く掲示する。小豆や砂糖の相場が上がっていることを正直に伝えるほうが、黙って量を減らすより信頼を保てる。
仕入れと販路を分散して固定費を薄める
次に、仕入れと販路の見直しである。小豆は産地や等級で価格差が大きい。一つの問屋に頼らず、複数の見積もりを取り、あんの炊き上がり量(=豆1キロから取れるあんの量)まで比べる。近隣の同業と共同で仕入れれば、量の面で交渉しやすくなる。販路では、法人の茶菓子や冠婚葬祭向けなど、数がまとまる注文を開拓したい。事前予約を中心にすれば、作りすぎによる廃棄も減る。
事業承継を早めに話し合い、選択肢を残す
最後に、先を見据えた判断である。後継者がいない場合でも、廃業しか道がないわけではない。レシピや技術を従業員に引き継ぐ、同業に事業を譲る、ブランドだけを残して製造を委託するなど、選択肢はいくつかある。ただし、どれも資金と時間に余裕があるうちでないと実行しにくい。赤字が続いてからの相談では、買い手も見つかりにくい。売上が落ちる前に数字と家族の意向を整理し、取引銀行や商工会、事業承継の支援窓口へ早めに相談しておきたい。
本記事の分析・見解は編集部によるものです。数値や制度の詳細は引用元の一次資料で確認してください。
